賃上げが物価上昇に追いついておらず、実質賃金が低下している話が多い。どの業種も人手不足である。外国人技能実習生においては木材関係も近年、正式に業種として登録されていたが、それまでは型枠大工とかで登録して実際は製材所で働いていようだ。ここまで円安が進むとこれから先、実習生がどの程度来るか分からない。林業でも期待されるようであるが、言葉が通じないと、危険作業の林業は難しいのかな?と思う。全産業でダントツの事故率を誇る林業である。デリケートな話や阿吽の呼吸でやっている現場の方が難しい。目端が利く、落ち着いて判断が出来るなど事故を起こすタイプは性格によるものが多い。その点ではいくらやる気や若さ、体力があっても技能実習生で林業家はなかなか育てるコースが難しい。
林業家の収入は伐採によるが、自分の手山か人の山の伐採かで大きく異なる。地元の昔の林家は自分や家族か、人夫を雇って山の手入れを行っていた。補助金などの手続きは組合にお願いして行う。人件費と木材価格が高い時は比較的これで回ったようだ。トラック1台分出せば、一か月は優に暮らせたとも聞く。人夫も農閑期の手すきな時でアルバイトの現金が手に入る。自分の山の手を入れる農家もいただろう。
今はどうかというと、チェーンソーも持たない、地元にもいなければ、そもそも相続した自分の山がどこにあるか不明の方も珍しくない。篤林家の時代を知っている方ならばともかく、材価の下落時期の平成の時代に山を貰っても、見に行く人の方が珍しい。自分自身、17,18年前に帰ってきて家業を継いだが、当時の山の人に案内して貰ったが扱い方が分からず、情報も無かったので境界立ち合いなど特別なケースを除き10年以上、まともに見てこなかった。自分でチェーンソーや重機を購入して、手入れをして初めて学んだことは多い。木の一本を伐採するのでも慣れないと重労働である。若い桧などは枝が引っかかって倒れない。1m位にどんどん切って終わる。それまで理屈で話をしていたが、現場研修で林業の骨身に染みた。建築現場で木材を運ぶのと使う筋肉が違う。足場がフラットではない。伐倒すると、時速30,40キロのスピードで木が倒れてくる。チェーンソーの入れ方が悪いとイメージと別の方向に倒れる。物理法則通りなのであるが、問題は人間がなかなかイメージ通りの施業が出来ない事である。
ある程度、山の現場慣れした人間でないと林業で仕事をするのは難しい。農業とは草刈りなど親和性がある。山の収入も材を出すのに加えて、タケノコ、シイタケ、木耳(キクラゲ)などの林産物などその地元の気候に合わせていったのであろう。社会的に副業OKの風潮であるが、農林関連は副業というより、組み合わせて収益を上げていったのであろう。
森林組合なども色々批判されることもあるが、本来は単独の林家だけでは難しい補助金申請や大型機械の導入などのスケールメリットやリスクヘッジが主体ではなかったかと思う。組合制度の本質は相互扶助の精神である。林業はスケールメリットが出しやすい職種である。まとまった山林は施業もし易い。林家も一人でするより機械で組合がしてくれる方が楽である。効率は上がっていくが、保有者の山林に対しての意識や手入れの能力は低下する一方であったろう。止む無しではあるが。
今は森林組合だけで全てを賄う訳ではなく、伐採する業者や植林や下草刈り、間伐などを請け負う業者がいる。伐採業者は量をこなせば、機械コストが下がる。現場によって能率も随分異なる。植林や下草刈、間伐は補助金があるので森林組合を通すケースが多いが、伐採だけならば業者だけでも出来る。最近は、植林の人手や苗木の不足で追いつかない山もあるという。再造林率が低い県もあると聞く。持続的にするためには伐採、植林、育林などの能力をバランス良く育てないと難しい。ウッドショックの恩恵も落ち着いている。大型の伐採機械導入も大半が補助金がらみである。補助金による導入設備はほぼ定価。これで労働分配率はどの程度なのであろうか。昭和の儲かり過ぎた林業、平成の儲からない林業、令和がどうなるかの判断はもう少し時間が掛かりそうである。