ふと思い出した話で。会社(法人)で山林もつとどうなるか、という話。山林というのは、当然、山林の土地の部分と、立木の部分に分けられる。日本の会計は米国会計基準の時価評価と違い、取得原価主義であるので基本は取得した際の価値が残る。そこまでは普通の土地とかと変わらない。問題は立木の方である。
立木は当然、年々成長する。で、どの程度成長したかは勿論現地でも確認できるし、森林簿などでも手を入れた履歴は確認できる。実際の実売の価格は帳簿では評価できない。仕入先に決算書を見せた際に山林の評価はどうしているの?と聞いたら半分で見ています、という話であった。
立木に関しては、保有している企業が業者を入れて手入れをした場合には、損金(経費)にならず、資産計上されてしまう。理屈で言えば工場や建築でコスト計上する考え方に似ている。問題は単年度で決算する法人会計に数十年経過して、皆伐しないと上記の積み上げた数字を資産から落とすことが出来ない事である。税法上積み立てをした形で不利になる。このような計上となると間伐補助金などの際に手入れをする以外で外注の業者に頼むのは難しい。企業会計を理解していない方には分かり辛いと思うが、経費計上が認められなければ、利益が増える。黒字分の納税額が大きくなる、資産も膨らむので資産税でも不利である。どちらも現金が出ていく話である。規模にもよるが経営を圧迫する話である。原木市場や伐採業者の法人で山林を購入するのは、すぐ伐採が出来ることがほぼ必須である。間伐などを施して補助金が入った山林は5年間は皆伐が禁止されるので、敬遠される。
では個人でもつ方がいいのかと言われると、固定資産税と森林保険などのランニングコストが発生する。此方は法人では経費計上できる。いずれにせよ、投資としてみるのであれば、皆伐した山林を自分で現金化できるのはほぼ不可能である。20歳くらいに植えて70くらいで皆伐などで采配すれば別で絶対とは言えないが。年金の支払いより受取りができるかも怪しいものである。個人主義が蔓延り、目先の話にうつろい易い昨今で、そんなものに投資するならば、新NISAや保険、株や投資信託の方が現実的に見えても仕方がない事である。昔はそんな選択肢も無かったのであろうが。
不動産(建物)や車でも、減価償却が出来るのに償却できない資産である。個人的には法人名義の山林の隣接地でなければ、個人名義で購入している。こっちだと世代交代であるので相続税が掛かってもくる。やはり法人保有でも個人保有でも一長一短でベストはない。多少の裏技は、山林経営を教えてくれた師匠が教えてくれたが、まだ実践していない。手法としては余りにトリッキーで、多少条件もあるので短期の伐採でもないと少々やりきれない。
いずれにせよ、法人会計で山林経営は相性の悪い話である。資産回転率などの指標もしっかり悪化する。全体の資産が大きくて余裕があるときだけの話になる。林野庁相手の勉強会で上記の話を問題として提起されるが、林野庁というより税務署相手の話である。そうそう変わる話ではないだろう。税法のデメリットをカバーするような山林経営や保有のメリットを出さないと耕作放棄地ならぬ保有放棄林が溢れかえるだろう。相続投機の義務化でどれだけの人が真面目にやるだろうか。価値のある宅地ならばいざ知らず。どのみち固定資産税の請求書は相続している誰かが受取支払いをしているのである。単価が安いといえど、市町村にとっては大事な収入源である。そのあたりのステークホルダー含め解決するのは、余ほどの調整が出来ないと進まない話であろう。
コロナ禍の際に、某大学のゼミの研究でドローンで山林の材積を測定する協力で山林を見て貰った。細かい説明は省くが随分精度は上がっている。IT技術やドローンの性能向上で、リモートで自分の山林の状況や材積、採算性が分かる時代が来るのであろうか。欧州では、伐採用の林業機械と工場の必要な規格と、相場のデータで採算が最適化された伐採を行うなども聞く。今の日本では、相場を聞いた耳でするので不足した規格の丸太が少しするとあちこちから出て、あふれる事もある。農業や漁業はどうなのであろうか?資源の全体像の把握や、伐採の際の最適化が出来るとまた別の景色が出てくるだろう。誰かいい知恵や技術で是非挑んで欲しいものである。